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設立15年目のご挨拶

スズケン一級建築士事務所は2020年に15年目を迎えます。東京都にて設立し約6年目黒区で活動し、その後写真のように自然豊かな長野市に拠点を移して9年目を迎えます。多くの方々に出会い支えられて15年目の年を迎えます。御礼申し上げます。現在の活動は、当初考えていた以上に広がりを持っており業務がルーティン化することなく新たな発見を日々感じながら意欲的に取り組むことができています。

特にここ4年で二つの大きな変化を同時に迎えていると実感しています。一つは個別案件の建築設計にとどまらず、地方自治体と連携した地方創生事業を業務の一環としていること。そして二つ目は、設計ツールを3次元設計に移行したこと。この二つの出来事が、偶然同時に起こり業務環境に大きな変化の波を起こしています。

1つ目の地方創生業務について。MN設計共同体・アンド・パートナーズを長野・東京の仲間と立ち上げました。私は、建物の再生について主に担当しています。これまでも古い建物を調査することは多くありました。しかし、地方創生としてまちづくりレベルで空き家を見学し出すと、調査数は数十倍に膨れ上がりました。私が調査するそれは、文化財のような建物ではなく、市井の、それも壊すのにお金がかかるからと捨てられかけた建物達を見て回ります。そこには、何十年か前に新築物件として世に送り出した建物の風化した姿がみられます。それらを繰り返し見ることによって建物にとって何が一義的で、何が副次的な要素で在るのか残酷なまでに見せつけられます。例えば敷地の条件に対して思慮の浅い建物は想像以上に弱い建物になってしまいます。構造的に弱いと言うより、建物の存在自体が邪魔になると言うことです。さらに、雨や風や寒さや湿度に対して適切な処理がなされていなければ、屋根や構造や仕上げの劣化も激しくなります。そうなると、無残な姿にならざるを得ません。また、公民区別無くどんな建物であっても社会の財産であり大切に設計していかなければならないと再認識しています。そして、作るときの物語や町の人々の記憶やエピソードが刻まれた建物は、オーナーが変わっても愛され続けていることが多いというのも実感します。そういった古い建物の調査と設計を繰り返していると、新築の図面を書いていても、まだ見ぬ建物の4,50年後の姿を頭のなかでぼんやりと想像し、何が最適かを考える視点が養われデザインの巾が広がっています。

同時に、数年前から3次元設計ツールを便利な道具として使ってきました。2年ほど前から、3Dプリンター、CNC、レーザーカッターなどのファブリケーションツールと組み合わせ、その活用を実験的に始めてきました。当初は模型を作ることを目的としていました。次第に大きな照明器具などのプロダクトを作り始め、その応用範囲の広さを確信しました。現在では実際の建物に使う建築部材まで自ら作り始めています。まだ部分的な応用でしか在りませんが、本年から本格的な実施段階に入ろうと決意しています。それは、建設業を取り巻く厳格な法的責任、流通、高度な規格化、省労力化により失われてしまった物作りの根源的な喜びを改めて獲得したいと心から思わせてくれています。楽しく設計しないと豊かな建物はできないと考えていますが、そのアシストを3次元設計によるデジタル化とファブリケーションツールが助けてくれています。そして昨年より、運用を始めたヘッドマウントディスプレイによるVRを組み合わせるとことで、仮想空間とデータと実際の物理的なものとが一体的に繋がり、空間のシミュレーションや動画の作成、部材のシミュレーションと試作とが短時間に行うことが可能になり設計の密度や伝達する際のビジュアルコミュニケーション方法が向上しています。

地方創生で得た時間軸も含めた設計者の視点は、とても繊細で従来の二次元図面や模型によるコミュニケーションでは伝えることが非常に困難でした。設計の三次元化により可能になった時間軸を含めたビジュアルコミュニケーションの技術向上が、これまで伝達が難しかったテーマも議題にすることが可能となります。偶然同時に起こった二つの変化から得た知見の組み合わせはとても相性が良いと感じています。

今後の建築設計において、これらの技術を幅広く効果的に組合わせていくことで、地方創生業務から得た知見も活かしながら施主にとって地域にとって社会の財産として価値を高い建築設計を行います。

以上のように、15年目の節目の年に大きな変化にわくわくしながらプロジェクトに取り組んでいく所存です。どうかみなさまお客様として、あるいは物作りのパートナーとしてプロジェクトを通じてこの喜びを分かち合えれば幸いです。何か良い機会がありましたら是非お声かけください。

最後になりましたが、皆様にとって実り多き一年になるよう願っております。

スズケン一級建築士事務所 鈴木貴詞

2020年1月6日

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